検査内容
視覚機能は、大きく3つに分けられます。「入力機能」、「視覚情報処理機能」、そして「出力機能」です。
「入力機能」は視覚情報を正確に効率よく眼に取り入れるために必要な機能であり、視力、眼球運動機能、両眼視機能があります。
これらの機能を眼科検診として検査し、患者さんの状態を総合的にとらえます。
下記の中から、患者さんに合わせた検査を複数組み合わせて施行します。
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VMI(Developmental Test of Visual-Motor integration) |
視覚―運動 統合発達検査 |
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TVPS-3rd
(Test of Visual-Perceptual Skills-3rd) |
視知覚スキル検査―3 |
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DTVP-3(Development Test of Visual Perception-Third
Edition) |
視知覚検査―3 |
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MVPT-4
(Motor Free Visual-Perceptual Skills-4) |
選択型視知覚スキル検査―4 |
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DEM
(Developmental Eye Movement Test) |
眼球運動発達検査 |
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NYSOA K-D TEST
(New York State Optpmetoric Association King-Devick Test) |
K―D 眼球運動発達検査 |
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DAM
(Draw A Man) |
グッドイナフ人物画知能検査 |
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フロスティグ |
視知覚発達検査 |
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NSUCO
(Northeastern State University College of Optometry
Oculomotor Test) |
眼球運動検査 |
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WISC-IV |
知能検査 |
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読み書き障害に対するスクリーニングテスト |
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VMI(Developmental Test of Visual-Motor integration)
視覚―運動 統合発達検査
VMIは「目と手の協応」の能力や、それに伴う視覚的な認知能力をみる検査です。視覚からの情報を駆使し、新たに自分の手で何かを生み出すためには、見た対象に関して、適切な概念をつかめる必要があります。
この検査の対象は文字ではないので、文化や知識に左右されず、幼いお子さんから年配の方まで受けられる検査です。結果は2ヶ月単位の月齢別に統計処理し数値化されます。
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TVPS-3rd(Test of Visual-Perceptual Skills-3rd)
視知覚スキル検査―3
この検査は複数の幾何学図形を対象として、視知覚情報の認知能力をみるものです。患者さんにとって「言語」を必要とせず、「図形」を視覚的に選別する検査ですから、文化や知識に左右されず、幼いお子さんから年配の方まで受けられる検査です。
TVPS-Rには7つの項目(下位検査)があります。各下位検査の得点は、3ヶ月単位の月齢で統計的に同年齢の子どもと照合され数値化します。また、総合的な評価も数値として報告します。
以下は、TVPS-Rの7項目(下位検査)の内容です。
【1】識別<Visual Discrimination>
視覚的マッチング能力が問われます。
マッチングとは、どれとどれが同じだと見極めることですが、図形の特徴に関して自分なりの概念をつかめないと、はっきりと「あっ、同じだ。」というふうに選べず、「なんとなく、同じ感じ。」とか、あるいはよくわからないといったことが起きます。
【2】単一図形の記憶<Visual Memory>
視覚的短期記憶の能力が問われる下位検査です。
視覚的な情報が、短時間でも正確に記憶に残らないと、刻一刻と瞬時に身の回りで起こる出来事や状況をうまく関係付けられません。作業をしていても 「あれ、なんだったけ?」といつも確認しなくてはならなかったり、あるいは、よいと判断して、一生懸命にしたことが勘違いだったりしかねません。
【3】空間関係<Visual Satial-Relationshis>
図形の形状に対する視覚的な上下左右の認知能力が問われます。
実はこの上下左右の感覚は自分の体を中心に培ってきたものです。3次元空間では前後の感覚も加わります。この感覚が未発達ですと、字を覚えにくかったり、鏡文字を書いたりということがおきかねません。また、自分を中心として空間を把握できてこそ、自分以外の人にとっての何がどのような関係におかれているかを、理解できるのです。
【4】恒常性<Visual Form-Constancy>
恒常性の能力というのは、ひとつの対象が条件や環境が変わっても、同じであると把握できることです。その対象に関して概念がつかめないと難しいことです。たとえば、文字やマークなどは日常の様々な場面にあふれています。ひとつの漢字でも、本に印刷されているものと、学校の先生が黒板に書いたものが、同じであると把握できないと学習がうまくいきません。
【5】連続図形の記憶<Visual Sequential Memory>
2 の「単一図形の記憶」よりも、記憶のあり方に、対象に関してその構成を把握する能力やカテゴリー化の能力が求められます。
【6】図と地<Visual Figure-Ground>
自分に必要な視覚的情報が「図」と呼ばれるものです。「図」が隠れている対象には、余分な情報も密集して描かれています。その余分な部分が「地」と呼ばれるものです。この下位検査では、自分にとって必要な視覚的情報だけを、合理的に浮き出させて取り出す判別能力が求められます。日常でも物を探す時や、学習時の、たとえば本の文字列から要となる言葉をつかみだすといった時にも必要な能力です。
【7】閉合<Visual Closure>
見え無いものをイメージしながら、対象の全体像を想像する必要があります。小刻みな手がかりをイメージで、うまくつなげないと、まちがった全体像を連想してしまいます。
また、眼球運動の機能がうまくいかないと、ばらばらに見えたりします。
なお、眼球運動は他の項目すべてでも必要とされることです。
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DTVP-3(Development Test of Visual-Perception-Third Edition)
視知覚検査―3
この検査は、一般に使われているフロスティグ視知覚発達検査を多岐に発展させたような検査です。基本的な線から複雑な図形までを描いてもらう下位検査と、指示に沿って選択肢の中から選んで答える下位検査が交互に施行されます。前者は主に目と手の協応を通して視覚情報処理能力が測られ、後者は内的な認知能力そのものが検出されます。
被検査者 (検査を受ける方)にとって、「言語」を必要とせず、「図形」を視覚情報として扱う検査ですから、文化や知識に左右されず、幼いお子さんから年配の方まで受けられる検査です。
結果は、各下位検査の標準得点(平均 10)と、全体を通した総合的視覚指数(平均100)で報告します。
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MVPT-4
(Motor Free Visual-Perceptual Skills-4)
選択型視知覚スキル検査―4
この検査は複数の幾何学図形を対象として、視知覚情報の認知能力をみるものです。
患者さんにとって、「言語」を必要とせず、「図形」を視覚的に選別してもらう検査ですから、文化や知識に左右されず、幼いお子さんから年配の方まで受けられる検査です。
検査結果は「視覚指数」、「パーセンタイル」、「視覚年齢」でご報告します。
MVPT-3では、識別、単一図形の記憶、空間関係、恒常性、図と地、閉合の能力が、総合的に検出されます。
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DEM(Developmental Eye Movement Test)
眼球運動発達検査
この検査は小学生から成人を対象に施行します。
縦(垂直)方向、または横(水平)方向にランダムな間隔で並ぶ数字の処理能力から、眼球運動の発達をみる検査です。結果は、年齢単位で同時期の多くの子どもたちのデータと比べています。この検査では、身体のバランス感覚から派生する眼球運動能力が発達していないと「行」がつかめず、斜めに数字をおったり、飛ばしてしまったり、反対に同じ箇所を何度か読んでしまうといったことが起きます。
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NYSOA K-D TEST(New York State Optpmetoric Association King-Devick Test)
K―D 眼球運動発達検査
この検査は衝動性眼球運動の発達をみる検査ですが、あらかじめ眼球運動が円滑でないことが予測される子どもの患者さんに施行しています。ステップごとに能力を補助するための工夫がしてあります。結果は、年齢単位で同時期の多くの子どもたちのデータと比較しますが、この検査で把握される内容は、検査数値そのものよりも、子どもの状態を理解し発達にあった支援を考えるデータとして有用です。
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DAM (Draw A Man)
グッドイナフ人物画知能検査
この検査は、人間の顔や身体をどう把握しているかという点から発達をみる検査です。絵の上手下手ではありません。「人」を描くためには、自分自身の身体感覚のイメージや他者の観察が必要です。
お友達の顔や手の表情など、何気ない身体のジェスチャーの意味を理解したり、自分からも表現できることは楽しいことです。これらは単に見えているのではなく、見て感じたり理解するもので、視覚認知能力を伴った社会性にも関係します。
知能検査といわれるものですが、この検査により動作性の知能や発達のすべてが分かるわけではありません。患者さんが「人」だけではなく、あらゆるものに向ける視覚の豊かさを育むために参考になる検査です。
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WISC-IV
知能検査
WISC- IV(ウィスク・フォー)は知能検査です。複数の下位検査の評価から「全検査 IQ (いわゆる知能指数)」が導き出されます。知能指数は同年齢の子どもの平均を 100 として表される数値です。
また、「言語理解指標」「知覚推理指標」「ワーキングメモリー」「処理速度指標」という 4 つの観点から指標得点が検出されます。このように複数の下位検査を吟味することにより、その子どもの学習能力の特徴が見えてくる場合があり、その後の療育の資料となる有意義な検査です。
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読み書き障害に対するスクリーニングテスト
発達性読み書き障害(発達性dyslexia)の診断には、客観的な学習到達度の評価と、知能検査、音韻意識検査、視覚認知検査他詳しい複数の検査が必要です。以下の4種類の検査を組み合わせて行います。
【1】小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)
小学生の読み書きスクリーニング検査は、小学校1年生から6年生までを対象に標準化された日本語(ひらがな、カタカナ、漢字)の読み書きの学習到達度を評価する検査です。ひらがな、カタカナ、漢字の音読および書き取りを行います。
▲音読:一文字ずつ読むものと、単語(熟語)を読むものの2種類あります。
▲書き取り:検査者の発した文字、および単語(熟語)を聞いて、復唱して書き取ります。
【2】聴覚性記憶検査
日本語の有意味単語を聞いて覚えて言う検査です。視覚認知と対比する目的で実施します。この検査により、聴覚性短期記憶、聴覚性音韻情報処理能力について知ることができます。聴覚性短期記憶とは、耳から聞いた情報をその場で記憶する能力のことです。
また、聴覚性音韻情報処理能力とは、耳から聞いた音声を正確に、迅速に処理する能力のことです。聴覚性記憶検査では、以下の課題を行っています。
▲再生課題:検査者の言った10以上の単語を聞いて記憶し、口頭で再生する課題です。それを5回実施します。
▲干渉課題:最初に聞いた単語とは異なる一連の単語を聞いて記憶し、再生する課題です。
▲干渉後再生課題:一連の単語を聞いて記憶し、再生する課題です。
▲再認課題:課題、干渉課題、それ以外の単語など多くの単語を聞いて、最初に記憶した単語かどうかを答える課題です。
検査結果は、再生率として、各課題で正答だった数/課題の数として表示しています。
【3】音韻意識検査
言語発達の内の日本語の音韻意識について、詳しく調べる検査です。音韻意識とは、話し言葉には音の単位が含まれていることを知り、その音の単位をさまざまに操作する能力のことです。音韻の操作能力は、聞く話す領域だけでなく、読み書きの領域にも深く影響しています。
音韻意識検査は、以下の5つの課題
▲削除課題:ある音を含む単語から、その音だけを削除して答える課題
▲逆唱課題:検査者が発した単語を聞き、その単語を逆から言う課題等を実施します
【4】音読検査
視覚提示された短文、長文を、音読してもらい、流暢性、音韻意識などを調べる検査です。提示課題は、ひらがな、カタカナ、漢字の混合文
(1)単音連続読み検査 ひらがな50文字を連続して音読する課題
(2)単語速読検査 有意味語、無意味語各30個それぞれの連続音読課題
(3)単文音読検査 3つの短文、少し長い短文、文章(ひらがな、カタカナ、漢字の混合文)
音読に要する時間(音読時間)を同年齢の平均時間と比較し検討します。また、読みの正確性と流暢性を調べ、どのような読み誤りがあるかについて考察します。
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